第2回「猪木正道研究セミナー」の報告 NPO法人猪木正道賞基金では、前回に続き、令和6年度主要事業の一つである単行本『戦う自由主義者 猪木正道とその時代』の編纂と関連して、2024年10月6日(日)15時30分~16時50分の間、八王子市学園都市センター12階第5セミナー室において、第2回「猪木正道研究セミナー」を実施しました。
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[プログラム] 挨 拶 猪木正道賞基金理事長 渡邉 昭夫
報 告 「国際関係史を学ぶ孫からみた猪木正道」 ― 祖父猪木正道と高坂正堯先生の“師弟関係”に焦点を当て ―
慶應義塾大学SFC研究所日印ラボ上席研究員 安藤 優香
司会兼コメンテーター 東京大学名誉教授、青山学院大学名誉教授 渡邉 昭夫
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高坂正堯は、猪木正道の京都大学での教え子の中でも最も高名な学者の一人であり、かつ論壇において活躍されていた方です。しかし猪木正道と高坂正堯の師弟関係についてはこれまであまり知られていません。今回は、孫の安藤優香氏に2017年9月に慶應義塾大学で行った第7回猪木正道研究会で報告した「孫から見た祖父猪木正道:人格主義を志して」をベースに、猪木正道と高坂正堯との“師弟関係”に焦点を当てた報告をお願いしました。
京都山科の猪木宅に高坂正堯氏は、頻繁に通われていたそうです。猪木ゼミ生の勝田吉太郎氏もよく猪木宅を訪れていた時代です。高坂氏は、猪木の長男武徳の家庭教師をしていたこともあり、勉強終了後に応接間で食事とっていたが、次第に家族と一緒に食事をするようになり、互いに食卓を囲んで自由に会話を楽しんでいたということです。安藤優香氏は猪木の三女の母から、高坂氏が「こんな気の合った師弟関係はありまへんで」と言っていたことを聞いたそうです。このように自由な雰囲気の師弟関係から高坂氏は後に、『国際際政治―恐怖と希望』のまえがきで、「この歴史の史実をはじめとする材料をさまざまな角度から見、自由に考えることができたことは猪木正道先生のおかげであった」と記していると説明しています。 さらに、高坂正堯教授の時事問題や安全保障問題への祖父猪木の評価は高く、特に日本の防衛力の基礎理論として位置付けられる「拒否的抑止論」を高坂氏が1976年10月発行「防衛計画の大綱」の導入に大きく寄与した点を重要業績と猪木は指摘しています(猪木正道著『私の二十世紀』)。他方、吉田茂首相の再軍備問題について、祖父猪木は『評伝吉田茂』で吉田首相が米国に再軍備を約束していたことを明らかにしたかったという見立てを補強しました。そのほか、猪木正道と高坂正堯との「自由主義」についての考え方の違いなどについて、重要かつ興味のある報告をされました。
報告の後、コメンテーターの渡邉昭夫理事長は、冒頭、「猪木正道氏は良い先生と良い弟子に恵まれて幸せな人だ。何故なら、猪木正道の先生は河合栄治郎。弟子には、高坂正堯、五百旗頭真など。さらに高坂正堯の弟子には、中西 寛、岩間陽子など実に有能な人たちが揃っている」と発言され、端的に感想を述べています。高坂氏については「私より2年後輩だが全ての点で先へ走っていった」と言及し、高坂氏の師弟関係について語っています。 かつて京都大学には高坂の父である高坂正顕などが“京都学派”なるものを作っていたが、それに対して猪木はどういう立場であったか関心を持っているとの発言もありました。 なお、安藤優香氏の報告の際に、猪木家で保存している河合栄治郎と高坂正堯の色紙にかかれた書(集合写真参照)が回覧されました。
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第2回「猪木正道研究セミナー」参加者
安藤俊英 庄司潤一郎 赤木完爾 岩間陽子 尾上定正 *永澤勲雄(司会) 安藤優香(報告者) 渡邉昭夫(コメンテーター) |
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